名古屋地方裁判所 昭和63年(わ)1677号 判決 1988年12月15日
本籍
名古屋市中村区栄生町二七一二番地
住居
同市同区同町二七番二四号
会社役員
岸正男
昭和九年一一月八日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官石田一宏出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役二年及び罰金六九〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、名古屋市中村区栄生町二七番二四号に居住し、同市東区泉一丁目一五番二三号チサンマンション栄リバーパーク八〇一号において、「株式経済研究所太閤」(昭和六一年一一月以前は「なごや太閤」)の名称で株式投資顧問業を経営するかたわら、継続して有価証券の売買を行うことにより所得を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、株式売買により得た所得のすべてを秘匿し、他の収入についても所得金額に関する収支計算をせず、適宜の金額を計上するところのいわゆる「つまみ申告」を行う方法により、所得の一部を秘匿した上
第一 昭和五九年分の実際の総所得金額が一、五九九万五、〇三三円であり、これに対する所得税額が四〇〇万九、二〇〇円であるのに、同六〇年三月一五日、名古屋市中村区太閤三丁目四番一号所在の名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が四五一万一、六〇〇円であり、これに対する所得税額が二九万一、〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額三七一万八、二〇〇円を免れ
第二 昭和六〇年分の実際の総所得金額が六、二三六万三、〇九六円であり、これに対する所得税額が三、一一三万七、六〇〇円であるのに、申告期限を徒過した同六一年五月二四日、前記名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が四五一万九、三九八円であり、これに対する所得税額が二八万九、三〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額三、〇八四万八、三〇〇円を免れ
第三 昭和六一年分の実際の総所得金額が三億三六六万六、三四六円であり、これに対する所得税額が一億九、九二八万七、四〇〇円であるのに、同六二年三月一三日、前記名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が七一九万六、二三九円であり、これに対する所得税額が九九万五、五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一億九、八二九万一、九〇〇円を免れ
もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。
(証拠の標目) (注) 括弧内の甲・乙算用数字は、各証拠書類一枚目表欄外に表記された検察官証拠請求番号
(略語) 検調書 検察官に対する供述調書
判示全部の事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書八通(乙2ないし9)及び検調書二通(乙10、11)
一 岸明子の大蔵事務官に対する質問てん末書四通(甲9、10、11、12)
一 田中宏昭の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲13)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書二〇通(甲14ないし33)
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の証明書二通(甲1、4)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の証明書二通(甲2、5)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の証明書二通(甲3、6)
(法令の適用)
一 判示所為 いずれも所得税法二三八条一、二項
一 刑種の選択 所定刑中懲役刑及び罰金刑の併科
一 併合罪加重 刑法四五条前段、四七条、一〇条、四八条二項
一 労役場留置 刑法一八条
一 懲役刑執行猶予 刑法二五条一項
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 前原捷一郎)